日・中・台 視えざる絆―中国首脳通訳のみた外交秘録



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日・中・台 視えざる絆―中国首脳通訳のみた外交秘録
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戦後台湾人のもう一つの軌跡

共和国成立直後に,多くの台湾出身者が「帰国華僑」として大陸に渡り,対日本・台湾工作に従事していたこと,また多くの人が比較的高位の官職についていたことは驚き。台湾社会は本省人・外省人の対立軸だけでなく,絶対数は少ないものの,大陸に憧れた本省人の存在を発掘したのは本書の大きな業績。小さなエピソード一つ一つが魅力的。インタビュー中心の手法もいい。本書の対象の多くの人が鬼籍に入ってしまったことは本当に惜しまれる。
ただ本の構成は人物と時代が行ったり来たりで読みにくい。いっそ大陸と絡み合った台湾人の戦後通史として時系列に記述した方がよかったのでは?また大陸の政治運動において彼らがどんな境遇にあったのかもう少し知りたかった。
抜群の取材力で描き出す秘められた日中台トライアングル

裏方として日中・日台・中台関係を支えた台湾人に対するインタビューをつうじて、日中台のトライアングルを水面下で結ぶ複雑な人間模様にスポットを当てた力作。日中国交正常化のときの周恩来首相の日本語通訳が台湾出身の女性だということは、以前に聞いたことがあったが、彼女が中国にわたって対日工作に就くようになった経緯や、後に対台湾工作に従事するようになったことなど、明らかにされた事実の数々に正直いって驚いた。日台断交の現場に居合わせた台湾人外交官の回顧談、中国の日本向け放送の責任者となった人物が台湾人で、しかも台湾の李登輝総統とも関係があったなど知らなかったエピソード満載で引き込まれるように読むことができた。日中関係や台湾情勢が急変するこの時期だけに、この本で描かれた歴史の裏側をいまいちどしっかりと理解しておきたいなあと思った次第。
中台関係の深層

 周恩来の日本語通訳、蒋介石の通訳も務めた台湾の外交官、北京放送日本語番組の責任者で李登輝の共産党時代の同志などなど……これまで表舞台に顔を見せることのなかった人たちによる証言を通じて、中国と台湾と日本の関係をひも解いてゆく秀作です。個人的には日台断交当時の台湾側の動きや、北京放送にまつわるエピソード、それに中国の対台湾工作の舞台裏事情など、今まで知らなかった話に引き込まれ、400ページ近い本にもかかわらず一晩で読み終えてしまいました。全体的に抑えた筆致ですが、着眼点のおもしろさと構成のよさもあり質の高い読み物に仕上がっています。全編にわたる貴重な証言の数々から史料としての価値も高い本だとおもいます。読書の秋にぜひ。




日本経済新聞社
激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実
台湾―変容し躊躇するアイデンティティ (ちくま新書)
日中関係―戦後から新時代へ (岩波新書 新赤版 (1021))
周恩来秘録 下
周恩来秘録 上